物販が売れない、オプションを用意しているのに売れないというお悩みをよく聞きます。
「物販をうまく提案できない」
「オプションが売れない」
あるいは「スタッフが売らない」
これらの悩みを持っている人(あるいはスタッフ)に共通していることは、きちんと提案をしていないことです。
だって、そもそも提案をしなければ、売れるわけがありません。
とはいえ、提案をやみくもにすると「このサロン売り込みきついな…」と思われるのが怖いという気持ちもわかります。
大事なのは、提案の考え方とやり方です。
マーケティング用語でオプションや物販の提案を「クロスセル」といいます。
このクロスセルの基本ができていないと、物販もオプションも売れるわけがないんです。
今回は、クロスセルの基本の考え方や方法を、サロンの物販やオプションを提案する事例でお伝えしていきます。
なぜクロスセルはするべきなのか
私がオススメしているのは、物販やオプションは積極的にクロスセルしていくことです。
もし物販やオプションがないなら、作った方がいいくらいです。
理由は二つあります。
労働時間に頼らない売上を作れる
サービス業というのは基本的に労働時間が売り上げに繋がる商売です。
ですからほぼ必然的に、儲けるためには労働時間を増やさなければいけません。
しかし、労働時間に頼らない売上を作る方法があります。
それが物販や、オプションです。(特に物販)
一人、あるいは少人数で店舗拡大を目指さないのであれば、ここを拡充することをオススメします。
客単価が上がり、集客頼りの売上作りから解放される
物販やオプションが売れていけば、一客あたりの売上(つまり客単価)は上がります。
客単価が上がれば同じ売上目標を、少ない客数で達成することができます。
極端な話、1万円のコースを提供しながら月商100万を目指す場合、100枠接客する必要があります。
でも100枠集客するのってかなり難しいですよね。
(しかも、1人でやっているなら100枠接客することも難しいかもしれません)
しかし、その1万円のコースの接客中に3000円のクロスセルして客単価が1万3000円になるなら…
同じ100万を目指していても77枠で済みます。
たった3000円のクロスセルで、これだけ必要客数に差が出るわけです。
なので、特に今の時期コロナで客数減などで集客に悩んでいる場合は、特に力を入れていくことをオススメしています。
クロスセルがうまくできない美容室の話
美容室はトリートメントのクロスセルが定番だと思います。
でも、クロスセルで大事なのは「それが必要だ!」と思ってもらうことです。
私がお客として行ったある美容室での話です。
シャンプー台に寝かされてから
「髪の毛傷んでるんでトリートメントしますか?」
と聞かれました。
そこで、お願いをするとなんと4種類もトリートメントの種類がありました。
「4つのトリートメントのうち、一番安いトリートメントが〇〇円なんですが、〇〇ってトリートメントが〇〇円で、〇〇ってトリートメントはこんな効果があって〇〇円で、一番上のトリートメントは〜〜〜」
シャンプー台に寝かされて、ほぼ耳だけで聞いている4種類のトリートメントの説明は正直全くよくわからず
「うーん…とりあえず一番安いやつでいいです」
と伝えました。
私自身、髪の毛傷んでるなと感じていたので、うまく提案できれば多少高いトリートメントも買ったかもしれません。
この提案方法には、大きく分けて3つの間違いがあります。
間違い① 種類が多すぎて伝わらない
人間がイメージできるのは3つが限界です。
4つは多すぎ、かつ選びにくいです。(詳しくは後述)
間違い② 各ランクの違いがわからない
トリートメントの名前と価格、あるいは効能だけ羅列されても「高い方がいいんだろうなぁ」という情報しかお客さんには伝わりません。
人はよくわからないものは買いませんし、さらに言えば素人は効果効能の違いだけではうまく選べません。
安いトリートメントではなく高いトリートメントをすることで、自分がどう変わるのかという”自分ごと”にしなければよくわからないのでいらない、安いのでいいとなってしまいます。
間違い③自分のオススメを伝えていない
お客さん自身に選ばせるというのは、親切のようで不親切です。
なぜなら、お客さんは自己流ではよくわからないので、プロであるあなたにお金を払ってお願いしに来ているんです。
人によっては「自分にとって何がベストなのか知りたい」というニーズもありますから、プロとしてのオススメは伝えた方がいいでしょう。
もちろん、そのオススメを本当に買うかどうかはお客さんが選ぶことです。
提案における2つの大前提
具体的な方法論に入る前に、提案における大前提をお伝えします。
常にベストを提案する
うまく提案ができない理由は、提案の目的を勘違しています。
提案とは、売ることが目的ではありません。
お客さんの信頼を獲得し、長期的にお付き合いすることが目的です。
特にスタッフが売らないというお悩みでありがちなのは、スタッフ自身が「安く済ませてあげることが親切だ」という勘違いを起こしていることです。
私の考えでは、安く済ませることは親切から最も遠いところにあります。
本来提案とは、そのお客さんのコンディションをより良くするために、ベストな(必要な)商品やオプションは何かを常に考えるからできることです。
そもそもなぜお客さんは、あなたにお金を払ってお願いしているかというと、より良いコンディションになりたいからです。
そうでないならお金と時間を使って来店しません。
だからこそ、お客さんはプロのベストな提案を期待して待っています。
お客さんにためを考えるのであれば、目の前のお客さんのコンディションをベストな状態にすることに全力を尽くすべきです。
そのための物販であり、オプションです。
とはいえ実際、安く済ませたいお客さんも存在します。
安く済ませたい人には遠慮なく断ってもらえばいいだけです。
提案してお客さんの買う買わないはお客さんの自由ですが、そもそも提案しないのはプロ失格です。
かつ、お客さんのお財布事情を勝手に配慮するのも失礼ですし、「より良くなる方法があるなら(買うかどうかはともかく)知りたい」というのがお客さんの心理でしょう。
提案は効果ではなくビフォーアフターを伝える
単に効果効能や、価格だけ伝えてもお客さんにはその価値が伝わりません。
なので提案するときは、その提案に至った理由(現状・ビフォー)とその提案を受けるとどうなるのか(アフター)を伝える必要があります。
例えば、
「さきほど髪の広がりが気になると言っていましたが、髪が傷んでいますね。追加で〇〇円かかりますが、トリートメントすると広がりにくくなると思いますがやりますか?」
という感じです。
髪の痛み(ビフォー)が解決すると、広がりにくくなる(アフター)と提案で何がどう変化するのかを伝えましょう。
物販やオプションを売るためのクロスセルの方法
では具体的なクロスセルの方法をお伝えしていきます。
ランクのあるものを提案する
美容室の事例のように4つも5つも提案されると理解できません。
人がパッと理解できるのは最大で3つまでです。
なので松竹梅の3つのランクで提案しましょう。
※この記事はメイン商品の商品構成ですが、オプションなどでも考え方は同じです。
価格だけを伝えるのではなくて、お客さんのコンディションと絡めて3つのランクを伝えましょう。
「トリートメントは3種類あって、〇〇円、〇〇円、〇〇円なんですけど、髪の状態を見ると〇〇円のものがオススメです。これはその下のものよりも髪の広がりが抑えやすいのでオススメなんですけどどうしましょう?」
という感じですね。
特に大事なのは、プロとして自分のオススメはどのランクであると堂々と伝えましょう。
高いものを勧めようと考える必要はありません。
その人のコンディションにとってベストなものを提案しましょう。
二段階でクロスセルする
人は、”財布を開いた瞬間”にクロスセルされるとつい買ってしまいます。
この財布を開いた瞬間というのは比喩であり、物理的な話に限りません。
例えば、自動車販売では、購入を決めた瞬間(これが”お財布を開いた瞬間”)に、オプションやサポートの案内をします。
なので、先ほどの例で言えばトリートメントをやるとお客さんが決めた瞬間に、すかさずヘッドスパを提案してみるのもいいでしょう。
「髪が傷んでいるので、追加で〇〇円かかりますがトリートメントすることをオススメします。」
「じゃあ、お願いします」
「もし髪質が気になるなら、ヘッドスパも一緒にできますけどしましょうか?」
という流れです。
ここでは流れがわかりやすいように簡単に書きましたが、ここでもお客さんのコンディションに絡めて提案するのが大事です。
これをやると、3種類の人に分かれます。
- どれも買わない人
- トリートメントだけ買う人
- トリートメントとヘッドスパを買う人
ほとんどの人がトリートメントだけ買い、一部の人が両方買っていく(あるいは何も買わない)イメージです。
二段階に提案を分けるメリットは、安く済ませたい人に余計な提案をしなくて済むことです。
最初にトリートメントを断った人には、ヘッドスパは提案しなくていいわけです。
しかし、トリートメントを買った人の中には、お金がかかってもベストが欲しい人がいるかもしれません。
なので、さらにベストなヘッドスパも提案します。
ただし、クロスセルを断ったお客さんは安く済ませたいのではなく、単に提案の価値が伝わっていない場合もあります。
なのでクロスセルの成功率があまりにも低い場合は、そもそも提案の仕方を見直すべきでしょう。
常にお客さんの悩みを解決するベストを提案しよう
以上がクロスセルの基本です。
お客さんの財布に寄り添うのではなく、お客さんのコンディションに寄り添ってベストを提案することが、クロスセルに限らずセールス全般では基本になります。
また、冒頭に書いた通り、労働によらない売上が作れ、かつ客単価が上がりますから物販やオプションを積極的に取り入れることをお勧めします。