先日こんな質問をいただきました。
よく差別化をしろと言われますが、瀬尾さんは他社との差別化についてどう思いますか?
この「差別化」という言葉、マーケティングを勉強しているとよく聞きますしある意味“罠”だとも思っています。
今日は私の失敗談から、差別化について考えてみようと思います。
罠=差別化のための差別化
他社との差別化と一言で言いますが、問題は具体的にどんな点で違いを作るかですよね。
よく陥りがちな罠としては『差別化のための差別化』です。
『差別化のための差別化』とは、「差別化をするという目的のためにされた差別化」のことです。
これは大概が失敗に終わります。
あなたはスマートフォン以前のガラケーを覚えていますか?
あれはまさに差別化のための差別化です。
メーカー各社が差別化を繰り返し不必要なまでに多機能化しました。
「この機能必要?」
「そんな機能よりも電池の持ちを良くしてよ!」
と当時思っていたことを思い出します。
差別化した結果、顧客のニーズに合ってないものが出来上がるのであれば、私はやらない方がマシだと思っています。
典型的な差別化失敗をした話
ちなみに当時の私は、
「みんな私と同じこと言ってるのに、なんでメーカーはわからないんだろう?」
と思っていました。
しかし私も同じような失敗をする時がきます。
健康美容ジャンルのインストラクターをしていた60代男性のプロモーションを担当していたときの事例です。
当時、競合でYouTubeに動画投稿していたのは若い女性のインストラクターばかり。
しかも美容目的の内容ばかりでした。
しかしそのノウハウは美容だけではなく健康にも効果があります。
そのため彼自身が60代でありながら健康的で若々しいライフスタイルをしているとを打ち出し、
『健康維持・予防医学としてのファスティング』
という差別化をしようと決定しました。
これは明確な『差別化』でした。
だって他は美容のことばかりで女性。
競合とは全然違います。
しかしこれは失敗に終わりました。
要因はニーズがなかったんです。
「健康維持や予防医学を学びたい」
ましてや「60代男性のライフスタイルを知りたい」
という層はYouTubeには極めて少かった。
それが失敗の大きな要因です。
ガラケーにしろ、私の失敗にしろ、共通している原因は
競合ばかりを見て、お客のニーズを見ていない
ということにあります。
差別化を考えるなら「まだ満たされていない顧客の欲」を考える
こういった失敗はよくあり、よく聞きます。
これを避けるためには競合だけではなく、お客のニーズを見る必要があります。
つまり差別化をするためには
『まだ競合が満たしていないお客の欲求を満たす』
という考え方をしなければなりません。
いくつか事例を見ていきましょう。
ドミノピザの事例
『熱々で美味しいピザをお宅まで30分以内にお届けします。間に合わなければ、代金はいただきません』
当時の宅配ピザは届くまで時間がかかりました。
そこでドミノピザは「さっさと届けて欲しい」という他社がまだ満たしていなかったお客の欲求を拾い上げて、「30分以内に届かなければ無料」と約束しました。
つまり差別化を考える際には他社とお客をそれぞれ見て
「まだ満たされていないお客のニーズは何か?」
と考えること。
そしてそのニーズを満たすと約束することです。
とはいえ、この差別化はすぐ他社に真似されてしまいましたけどね。
ファッションセンターしまむらの事例
ファッション業界の中でも市況がしんどい着物業界。
2017年夏の浴衣商戦は、どこも伸び悩み苦戦していました。
そんな中で前年度よりも売上げを伸ばした唯一の会社。
それが、着物・浴衣のプロでもないファッションセンターしまむらでした。
しまむらの勝因は「洗える浴衣」とCMなどで大々的に打ち出したこと。
浴衣が洗濯機で洗えることは着物業界では常識でしたが、一般消費者の多くは知りません。
「自宅の洗濯機で浴衣を洗いたい」
「自宅で洗えればもっとカジュアルに着れるのに」
こういった顧客の欲求を満たす打ち出し方をして見事順調に売り上げを伸ばしました。
まとめ
このように差別化を考える際は、他社だけではなく顧客の欲求を満たすことを主眼において考える。
そうでないと『差別化のための差別化』という罠に陥りだれも欲しくないものが出来上がる悲惨な結果に終わります。
あなたの業界では常識だけど顧客は知らないこと、なにかありませんか?
ちょっと考えてみてくださいね。